ーー谷本さんの作品は一見すると抽象的で難しく感じますが、どのように作られているのでしょうか?
谷本 以前、焼き物の作品を作っていたとき、形が崩れた状態で焼きあがってきたことがありました。その見た目が面白かったので、あとから同じように崩れた形を作ろうとしていたとき、作品を作るというより、遊んでいるみたいに感じて。私の作品はそういった「遊びの延長」のような感覚で作ることが多いかもしれません。ですので、作品が狙ったとおりにならなくてもよくて、自分の想像から離れていってほしいと思っています。だから極端なことを言うと、作品を展示していて、誰かが触って壊れたりしてもいいんです。
ーーそれは偶然性を狙っているということですか?
谷本 特にそういったことを期待しているわけではないです。「こうなったらいいな」と思うことはありますが、いい意味で期待を裏切られたい。例えばコップを机にポンと素直に置くよりも、適当にポイッと投げて落ちて転がるときのように、自分にはコントロールのできない状態に心地良さを感じます。
ーーそれはなぜでしょうか?
谷本 私の意志からモノが自由になっているように感じるからかもしれません。何気なく転がっている、そのたたずまいがカッコよくて素敵なんです。ただし、作ったものを改めて展示場所に置くときにはいつもジレンマがあります。作った後よりも、作られる瞬間を見てもらいたいので。「形が変化していく瞬間」、その状況をそのまま見てもらいたいと思っています。
ーー谷本さんは兵庫県出身とのことですが、 神戸の街の印象について教えてください。
谷本 神戸は地元から離れていたので、高校生の頃は「憧れの街」というイメージがありました。
ーーこれからのご予定を教えてください。
谷本 5月に大阪のコーポ北加賀屋で二人展をする予定です。過去の展覧会でNGが出たために展示をすることができなかった作品がいくつかあるのですが、そこのスペースでは比較的自由に展示ができるので、この機会にやりたいことを全部やりたいなぁと考えています。
ARTIST INTERVIEW
現代美術作家

自由な形。グニャっとした感じ。


動物や人物に建物。描かれたそのどれもが愛らしく、見る人の心を和ませてくれる池口さんの作品。グニャリと歪んだ形にギュッとつぶされた形。それらが心地よく空間へ散りばめられた谷本さんの作品。不思議とお二人の作品に共通する、自由で奔放な軽やかさ。その魅力についてお話を伺いました。
――制作では、 どんなときに楽しいと感じますか?
池口 絵を描いてるときはいつも楽しいです。だからいつもノリノリで描いています。それに、描き終わったときの〝やったったぞ〞という達成感もいいですね。「何かこれを描こう」と決めて描くというよりも、目について気に入ったものを片っ端から描くことが多いです。
ーー池口さんの展示では、とにかく作品の量が多いのも特徴ですね。
池口 そうなんです。なのでいつも展示のときには、作品をどのように並べるか、ずいぶん悩むことになります。そのうえ、私はトンカチを扱うのが苦手なので、展示作業のときはいつも困っているんです(笑)
ーー様々なモチーフの作品がありますが、 どれも共通した独特の筆使いがあります。絵画を制作されるうえで意識されることはありますか?
池口 色に関しては、私は黄色がとても好きなのでよく使います。黄色は明るくて元気の出る色ですし。絵のモチーフには鳥がよく出てくるかもしれません。鳥が好きなんです。ネットで画像検索をして、鳥のイメージをたくさん集めて、それを見ながら描いています。鳥はつぶらな目とクネっと曲がったクチバシが面白いですね。特に小鳥は、寄ってきてくれそうな感じがして好きなんです。
ーー池口さんはいまは京都にお住まいですが、 神戸の街の印象について教えてください。
池口 以前に中華街辺りの風景を描いたことがあるんですが、建物の形が面白かったです。人工物なので、直線で〝決め〞るところはしっかり〝決め〞てあるのに対して、不思議と角が丸くなっていたりと、フニャフニャした部分もあって。そういう「カチッとした感じ」と「グニャッとした感じ」のギャップにとても惹かれます。
ーーそれは学生時代に建築やデザインを学んでいたことと関係があるのでしょうか。
池口 大学での制作には、いつもきっちりとした枠が決まっていました。私もそれに合わせようとがんばっていましたが、なかなかうまくいかなくて。もしかしたらその頃の反動で、カチッと決まった形に収まらない、グニャッとしたモチーフを絵にしているのかもしれませんね。
池口友理
池口友理 いけぐち・ゆり
1985年 三重県生まれ。
2009年 京都工芸繊維大学卒業。
2009年 第13回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品「キリンの絵」
2013年 マクドナルド BIG MAC AWARD グランプリ
2015年 3月、池口友理 個展「日々の作品」Gallery301
HP:ikeguchiyuri.com
谷本真理
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谷本真理 たにもと・まり
1986年兵庫県生まれ
2011年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2013年「黄色地に銀のクマ∪スーパーホームパーティー」神戸アートビレッジセンター(兵庫)
2011年「新・陶・宣・言」豊田市美術館(愛知)
2014年「Under 35 谷本真理展」BankART studio NYK(神奈川)
2014年より、京都の三条で喫茶・お酒の店「みず色クラブ」を運営。
聞き手・執筆 ユルキヤスヒト